高校生ラップ選手権の歴代優勝者たち【第1回〜第16回】

本記事では、高校生ラップ選手権の初回から最新の第16回までの歴代優勝者をご紹介します。

読み終わる頃には、各優勝者の当時のバトルスタイルも合わせて把握できるでしょう。

高校生ラップ選手権の概要とルール

概要

「高校生ラップ選手権」とは、小籔千豊がMCを務めるBSスカパーで放送されている「BAZOOKA!!!」内のコーナーの人気企画です。2012年に第1回大会が実施され、半年に1回開催されています。日本全国の高校生たちがフリースタイルラップでMCバトルをして、優勝を狙います。

第2回までは番組のコーナーの1つとして、スタジオで収録していました。しかし高い人気を誇ることから、第3回以降はライブハウスを会場としています。各地方で番組主催の予選も行われ、イベントの一部ではヒップホップミュージシャンによるライブも楽しめます。

ルール

性別や国籍不問で、高校生であれば参加可能です。高校に通っていなくても、高校生の年齢であれば出場できます。5年制の高校に通っていたり、留年している場合も、高校生であることが証明できれば、出場権があります。

また3月に開催される「高校生ラップ選手権」では、既に高校の卒業式を終えたMCも多くなります。よって「高校生ラップ選手権」は、高校生世代のフリースタイルバトルと言って良いでしょう。


第1回高校生ラップ選手権の優勝者:K-九

T-PABLOWの公式Twitterより出典

2012年に開催された「高校生ラップ選手権」初大会の優勝者は「K-九」です。彼は、現在の「T-PABLOW」です。

今も感じられる圧倒的なカリスマ性は、優勝した頃から変わりません。当時から、T-PABLOWの特徴であるアメリカギャング風の自由奔放なフリースタイルと力強い韻も特徴でした。『なんでも出来上がった状態でしか他人に見せたくない』というK-九は、出場時はまだラップを始めて4ヶ月でしたが、『毎日毎日生活の一部のように常にフリースタイルやラップの練習をした』そうです。その努力する根性と才能で、初めて世の中にK-九(T-PABLOW)のラップを披露した時から、既に彼の押韻スキルはずば抜けたものでした。

初回の優勝者が貫禄のあるK-九だからこそ、「高校生ラップ選手権」はすぐに爆発的な人気を得たと言っても、過言ではないでしょう。言うまでもなく、日本のヒップホップ界を牽引するキングの一人です。

T-PABLOWについてさらに詳しく知りたい方は「T-PABLOW 徹底解剖! 生い立ちからファッション・タトゥーなどにもお答えします!」を参考にしてください。


第2回高校生ラップ選手権の優勝者:Kay-on

mcbattle-ch.jpより出典

初回と同じく2012年に開催された「第2回高校生ラップ選手権」の優勝者は、「Kay-on(けいおん)」です。Kay-onは小学校6年生からリリックを書き始めたという、早熟ラッパーで、高校生とは思えない程の磨きのかかったサウンドやフローのレベルの高さで優勝しました。2PACのリリックが自分の境遇とリンクすることから感銘を受け、2PACをリスペクトしており、それはKay-onのラップスタイルに影響を与えています。大阪府のコリアンタウン出身の在日韓国人3世のKay-onはラップを続け、売れることで偏見などを無くすことを目指していました。崇高な目的を持っていたラッパーといえるでしょう。在日韓国人としてのアイデンティティをラップに昇華している、アーティストです。

Kay-onの最大の特徴は、完成度の高いフローと声質に恵まれたダミ声から生まれるグルーヴ感のあるラップです。審査員も絶賛したように、まさに楽器のような声で、各ジャンルのボーカルに嫉妬されているそうです。インパクトのあるパンチラインはあまりありません。しかし、音楽のために生まれたような声質と2PACに影響を受けたラップスタイルで、本格派ラッパーとしての素質は持っていました。

現在は、ラッパーとしての第一線は退きましたが、実の兄であるKwiseon(キソン)と共に音源を出したり、ライブを開催したりと音楽の道を歩んではいるようです。

Kay-onについてさらに詳しく知りたい方は「【高校生ラップ選手権 優勝者】Kay-onの生い立ちと今、代表曲を知る。」を参考にしてください。


第3回高校生ラップ選手権の優勝者:HIYADAM

jj-jj.netより出典

2013年に開催された第3回高校生ラップ選手権の優勝者は「HIYADAM(ヒヤダム)」です。他の出場者と比べて圧倒的な実力で優勝まで、駆け上りました。

ヒップホップ好きな母親の影響で幼い頃からブラックミュージックに触れており、13歳でリリックを書き始め、15歳でマイクを握るという音楽人生を歩んできたのがHIYADAMです。ヒップホップのみならず、R&B、ソウル、ファンクなど幅広いジャンルを吸収して「深い音楽を作る」をモットーとしているHIYADAMの生み出すラップには、安定感と深みがあります。高校生とは思えない程の完成したフロウと、クールなバイブスが特徴です。

高校生ラップ選手権に出場して、周りから「フロウがすごい」と評価されるまで、HIYADAM自身はむしろ自身のラップを「フロウのないラップ」と捉えていたそうです。それほど彼にとっては、ブラックミュージックを聴いて培った「流れるようなフロウ」が自然体であった点は驚嘆します。自分のラップは「少しわかりづらくて、聞き取りづらい」と認識していたHIYADAMは、あえて間を空けていましたが、結果的にはそれも会場を盛り上げるエッセンスとなっていました。また短い言葉で韻を踏むことを意識したことで、エッジの効いたラップとなり、視聴者を飽きさせませんでした。

HIYADAMは現在ラッパーだけでなく、デザイナーやモデルの仕事もこなしながら、アメリカ、フランス、韓国など海外の著名アーティストとコラボレーションをするなど、ワールドワイドな活動を展開しています。これからも音源やファッションで最先端を走り続けるであろうHIYADAMに期待です。

HIYADAMについてさらに詳しく知りたい方は「HIYADAMの身長、ファッション、楽曲は?」を参考にしてください。


第4回高校生ラップ選手権の優勝者:T-PABLOW

kai-you.netより出典

第3回と同じく2013年に開催された、第4回高校生ラップ選手権の優勝者は「T-PABLOW」です。初回の優勝者「K-九」が名前を変えて、出場しました。

第4回は非常に盛り上がった大会となり、「高校生ラップ選手権」の知名度も一気に上がりました。そしてT-PABLOWのための大会と呼べる程、彼のずば抜けた実力とカリスマ性を見せつけられた大会でもありました。T-PABLOWのあまりの格好良さのおかげで、「高校生ラップ選手権」自体も人気がさらに上がり、本格的に人気コンテンツとして定着しました。T-PABLOWは、高校生ラップ選手権の最大の功労者と呼べるでしょう。彼のおかげで第1回大会が成功し、大会の存続が決まりました。そして第4回大会では、そのカリスマ性で更なるムーブメントを起こしました。

「2020年じゃねえが奪い取る金メダル」や「勝利の女神が交際相手」など数々のパンチラインを落として、自身2度目の優勝の栄光を勝ち取りました。何かに取り憑かれているかのようなラップで、的確に差しながらも自身をしっかりと制御した余裕があり、そのパワー感は圧倒的でした。長いブランクは全く感じさせない、優勝が当然と思わせるようなライミングスキルを見せつけました。T-Pablowが現在でも、そしてこれからもシーンを引っ張り続けるラッパーであることは間違いありません。

T-PABLOWについてさらに詳しく知りたい方は「T-PABLOW 徹底解剖! 生い立ちからファッション・タトゥーなどにもお答えします!」を参考にしてください。


第5回高校生ラップ選手権の優勝者:YZERR

kai-you.netより出典

2014年に開催された、第5回高校生ラップ選手権の優勝者は「YZERR」です。初回と第4回の優勝者であるT-Pablowの双子の弟で、兄弟で組んでいる「2WIN」、そしてT-Pablowも含めた8MCによるヒップホップグループ「BAD HOP」のメンバーでもあります。

T-Pablow(当時はK-九)と共に出場した第1回大会では、実力不足の感が否めませんでした。(YZERRも、当時はDIABLOでした。)第1回大会では優勝したT-Pablowに対して、YZERRは1回戦敗退、そして第4回ではT-Pablowのサポートに徹しました。その際の悔しさを糧にしたYZERRの練習の積み重ねが実を結び、相当にスキルアップした実力を第5回大会では見せつけました。サイファーで練習を積んだ際に身についた経験や言葉が自然と溢れ出て、バトルの最中は何を言っているかも分からないような感覚だったそうです。まさに無心にバトルに挑んでいる状態です。1対3のフリースタイルを主に練習したそうですが、もはや「練習」というより「生活習慣」になるほど長時間・日々繰り返してリリックの紡ぎ出しを完全に自分のものとしました。考えて韻を吐いているわけではなく、もはや自然体に出る域に達したYZERRの繰り出す韻は必聴です。

第5回大会では、2回戦のYZERR vs かしわのバトルも必見です。硬派で固い韻を繰り出すYZERRに対し、「だんじりの街」大阪府岸和田市で育ったかしわは岸和田節炸裂のソウルフルなフロウで応酬しました。正反対の2人のぶつかり合いに、判定が真二つに分かれ、決着がつかず延長戦にまで持ち込まれた白熱のバトルは、まさに「熱い」です。

なおYZERRは、MCのみならず、BAD HOPでは楽曲の立案、制作指揮、プロデュースを行っており、リーダーシップとビジネスセンスに長けたラッパーです。今後の幅広い活動の方向性からも、目が離せません。

YZERRについてさらに詳しく知りたい方は「YZERRの全貌! インスタ・ファッション・タトゥーなどの疑問にお答えします!」を参考にしてください。


第6回高校生ラップ選手権の優勝者:MC☆ニガリ a.k.a 赤い稲妻

bs-sptv.comより出典

第5回と同じく2014年に開催された、第6回高校生ラップ選手権の優勝者はMC☆ニガリ a.k.a 赤い稲妻です。4回目の出場で、彼は悲願の優勝を果たし、着実に着けてきた実力を見せつけました。

初登場の「第3回高校生ラップ選手権」の紹介VTRでは、おじいちゃんの話がメインで、ある意味では視聴者にインパクトを与え、多くの人の印象に残りました。高校生ラップ選手権に出場するための移動手段として利用するまでは、電車にも乗ったことがなかったそうです。彼自身も「本当にど田舎」と、出身地を称しています。MCニガリのラッパー人生を歩むキッカケも、興味深いものです。偶然にも友達と行ったカラオケでAK-69のラップに触れ、父親と共有のパソコンにカタカナで「ラップ」と調べるところから始まったというレアなエピソードの持ち主でもあります。

その彼の与える色々なインパクトは、MCニガリのラップにも反映されています。MCニガリは、純朴な外見からは想像がつかないような、非常にキレの良いラップが特徴です。そのさまは、まるでマイクを持つと人格が変わったかのようです。相手からのディスを物ともせずに、逆にエネルギーに変えて倍にして返すスタイルが、彼の強みです。MCニガリの今バトルで繰り出した、パンチラインの一つが『地方ローカルからこの音楽は革命起こす』ですが、有言実行したことに凄さを感じます。赤いキャップ・赤いTシャツ・赤いクロックスなど、MC名である「赤い稲妻」を体現した服装でステージに立つことが多い点も、MCニガリの特徴でした。今でもMCニガリは、日本のヒップホップ界のトップシーンを走り続けているラッパーです。

MC☆ニガリ a.k.a 赤い稲妻についてさらに詳しく知りたい方は「MC☆ニガリa.k.a赤い稲妻 フリースタイルダンジョン制覇までと、ファッション、代表曲を知る。」を参考にしてください。


第7回高校生ラップ選手権の優勝者:MC☆ニガリ a.k.a 赤い稲妻

kai-you.netより出典

2015年に開催された、第7回高校生ラップ選手権の優勝者もMC☆ニガリ a.k.a 赤い稲妻です。この結果、彼は史上初、そして現状では唯一の「高校生ラップ選手権」2連覇を達成した覇者となりました。

東京の先輩や地元からの大きな応援を受け、「かっこ悪い姿だけは見せられない」と、MCニガリが大会に臨んだ結果です。本人はこの大会での優勝は、「自分の絶対の実力による功績ではなく、微妙な優勝だった」と考えています。しかし、第7回大会でもやはり、確かな実力とバイブスは光っており、MCニガリの特徴である「面白みのある切り返し」は健在でした。さすがは「高校生と一般のレベルに隔たりがある」とされていた既存の風潮を、「UMB2014東京予選優勝」によって変えたMCニガリだけのことはあります。

また学校ではとてもシャイで友達がおらず、人前でパフォーマンスをできるような子ではなかったMCニガリが、ラップスターと成功したという彼のヒップホップドリームの体現は、学校や社会での居場所に悩む子供たちに夢を与えたそうです。現在でも精力的に活動しているMCニガリですが、今後も成長が楽しみなラッパーでしょう。

MC☆ニガリ a.k.a 赤い稲妻についてさらに詳しく知りたい方は「MC☆ニガリa.k.a赤い稲妻 フリースタイルダンジョン制覇までと、ファッション、代表曲を知る。」を参考にしてください。


第8回高校生ラップ選手権の優勝者:LEON a.k.a 獅子

iflyer.tvより出典

第7回と同じく2015年に開催された、第8回高校生ラップ選手権の優勝者はLEON a.k.a 獅子(現: Leon Fanourakis)です。のちに「ラップスタア誕生」でも優勝したLEONは、音源でもシーンを引っ張る存在です。

両親が共にR&Bやロックの経験者の音楽好きゆえに、幼少期から音楽に触れて育ち、小学生の頃はRed Hot Chili PeppersやRage Against the Machineなどの英語圏のロックを好んでいたそうです。契機は11歳の時に聴いたLinkin ParkとJay-Zの「Numb」のコラボ曲で、衝撃を受けたLEONは以降ヒップホップにはまりました。当時のLEONは、特にUSヒップホップばかり聴いていたそうです。また同時期に、LEONは自分で一からトラックメイクも始めるようになります。

そんな彼のラップには、様々な音楽を聴いてきた経験と育った環境、そして天性の才能を感じる日本人離れしたグルーヴ感があります。2014年にはラッパーでありながら、地元横浜の「ROAD TO 横浜レゲエ祭2014」にも出場し、着実に実力をつけていました大会開催前の下馬評では優勝候補とされていませんでしたが、大会では実力を発揮して堂々の優勝を飾りました。LEONの特徴であるラップのずば抜けた上手さ、フロウとビートアプローチ、聴き心地の良さは、第8回大会の段階で既に顕著でした。韻はそこまで固くなく、逆にフロウの抜群の格好良さを誇ります。まさにフロウを駆使した「かっこいいラップ」ラップスタイルで、視聴者を魅了しました。また普段はニコニコと人懐っこい表情のLEONですが、ステージに立った瞬間に剥き出しの形相に様変わりするのも、LEONの魅力です。

現在は音源でもリスナーを楽しませてくれているLEONですが、今後ますます進化しながら活躍するでしょう。

LEON a.k.a 獅子(現: Leon Fanourakis)についてさらに詳しく知りたい方は「Leon Fanourakisの生い立ちとファッション、楽曲を徹底解剖!」を参考にしてください。


第9回高校生ラップ選手権の優勝者:裂固

kai-you.netより出典

2016年に開催された、第9回高校生ラップ選手権の優勝者は、フリースタイルダンジョンの2代目モンスターとしてお馴染みの裂固です。

2度の落選を経て、第9回高校生ラップ選手権のオーディションでは、念願のトップ通過で初出場を決めました。初出場ながら、既に完璧ともいえる完成度の高いラップを披露して優勝を飾りました。フロウは対戦相手のLick-Gに押されている感がありましたが、視聴者を魅せた押韻スキルは、歴代出場者の中でもトップクラスの抜群のレベルの高さでした。裂固曰く「化物級の上手さ」を持つ、先行のLick-Gの非常に高度なスキルと挑戦的なパンチラインに対して、裂固は相手に突き刺さる的確なライムで倍返しにして繰り出す応酬を披露しました。その一語一語の重みは、審査員である鎮座DOPENESSに「韻を踏む言葉の選び方が怖すぎる」といわしめたほどでした。硬い韻や面白いワードチョイスで次々に強敵を打ち倒す様は、さすがは「今大会のダークホース」と称されただけありました。日々大量のリリックを書いて練習していた際に、押韻と内容を意識していた結果が、ディスとして相手に突き刺さる強い表現の完成に繋がったのでしょう。

または父親が借金を抱えて両親が離婚した後、裂固は精神疾患を抱える母と妹を助けるために必死で生活してきました。経済的事情から高校進学を断念し、週6日間回転すし店で働き、週1日ライブを行っていたそうです。裂固の繰り出すラップは、彼の自分の足で戦って、前を見ながら頑張り続ける生き様の反映といえるでしょう。

ちなみに第9回大会での優勝から、ライブの依頼が殺到して音楽の収入で食べていけるようになったそうです。タイトに早口で畳み掛けるように韻を踏むラップスキルと、逆境をバネにしているハングリー精神が魅力の裂固には、今後の活動も期待です。

裂固についてさらに詳しく知りたい方は「裂固 フリースタイルダンジョンでの活躍、身長、生い立ちまで魅力を余すことなく解説します!」を参考にしてください。


第10回高校生ラップ選手権の優勝者:じょう

kai-you.netより出典

第9回と同じく2016年に開催された、第10回高校生ラップ選手権の開催場所は、なんと日本武道館でした。開催の度に規模を拡大させてきた大会ではありますが、MCバトルの大会を日本武道館で開催することは前代未聞で、ヒップホップ界に衝撃が走りました。しかし日本武道館は、現在のMCバトルムーブメントの立役者である本大会にふさわしい開催場所でしょう。

記念すべき第10回大会は、歴代の優勝者に加え、視聴者投票で選ばれたラッパーも出場する、「高校生ラップ選手権」のオールスター戦状態で、名実共に国内最大のバトルイベントとなりました。そんな特別な第10回大会で、優勝候補のT-Pablowを倒して王者に輝いたのが「じょう」です。

中学2年生の時にいじめられた経験を持つじょうは「いじめている奴らをラップで見返す!」という強い気持ちで、ラップを始めたそうです。その当時の闇しかなかった彼の世界に灯る唯一の光が、ヒップホップであったためでもあります。

じょうのラップの特徴である、スタンダードなラップスタイルを完璧にまで極めた、4小節と8小節目に硬い韻を落とすスキルは、サイファーに通いつめて磨かれたものです。第6回大会にも出場経験を持つじょうですが、その時と比べ第10回大会では、格段にリズム感がよくなり、スキルも覚悟も成長した様子が伺えました。第10回大会でもバチバチの展開に何度も発展した、ステージ上のリスペクトなしのディスとクオリティーの高い押韻、独自性の強いパンチライン、自由自在で派手なフロウを駆使して、優勝に輝きました。マイク1本で闇を光に変える力を持つヒップホップ、そしてそれを実現したじょうに勇気づけられているリスナーも、多いのではないでしょうか?

じょうについてさらに詳しく知りたい方は「ラッパー じょうの生い立ちから人気ラッパーになるまでの道のり。」を参考にしてください。


第11回高校生ラップ選手権の優勝者:9for

barks.jpより出典

2017年に開催された、第11回高校生ラップ選手権の優勝者は9for(ナインフォー)です。出場資格最後の年である20歳で初出場し、見事初優勝を収めました。

ラップスキルもトップクラスですが、9forの特筆すべき才能は、相手の韻に対して非常にテクニカルなトンチの効いたアンサーを返す点です。押韻とアンサー、フロウ、バイブスの良さがとても抜群で優勝を飾った、9forの頭の回転の良さが伺えます。第11回大会でも、9forのクオリティーの高いライムやフロウは当然ながら、言葉遊びや数字ネタ、揚げ足、そして醸し出す貫禄は、視聴者の目と耳に焼き付きました。彼のバイブスのコントロールの仕方、視聴者の魅せ方、ライム、フロウなど基礎能力は、圧倒的なレベルの高さでした。

高校生ラップ選手権での優勝後も、様々なMCバトルに参戦して、スキルを磨き続けています。そして、9forはさらに機転の効いたアンサーや多彩なフロウ、レベルアップした押韻を武器に、あらゆる大会で優勝を果たしています。今ではフロウスキルとビートアプローチは、全ラッパーの中でもトップクラスとなりました。今後もますます成長するであろう9forの活躍が、楽しみです。

9forについてさらに詳しく知りたい方は「9for 生い立ちから人気ラッパーになるまでの道のり。」を参考にしてください。


第12回高校生ラップ選手権の優勝者:Core-Boy

kai-you.netより出典

第11回と同じく2017年に開催された、第12回高校生ラップ選手権の優勝者はCore-Boy(現:Novel Core)です。

高い即興性、インテリジェンスな言葉選びと佇まい、貫禄のあるステージングで、「名実共にラッパーとしてのポジションを既に手中に収めている」という姿勢を崩さずに続けた的確なラップを武器に、優勝に輝きました。元々はクラシック音楽が好きでオーケストラの指揮者を目指していた、Core-Boyには安定したリズム感があります。また、どんな相手でも常に冷静に対応する的確なアンサーが光りました。

Core-Boy曰く、「こいつもしかしたらやるんじゃないか?」と視聴者を期待させる風格を身に付け、「それを信じれば勝てる」という自信があったそうです。また「勝つ」ことだけにこだわるのでなく、Core-Boyは「試合に負けても勝負に勝てば良い」とのスタンスでバトルをしています。大会中に何度もベストバウトを叩き出せば、名前が売れるからです。よって「高校生ラップ選手権優勝」のタイトルも、プロモーションやブランディングに活用しています。Core-Boyがラップをする理由は、ラップが「マイノリティのためのカウンターカルチャーであり、同時に音楽であり、万国共通のもの」だからです。つまり彼からすると、「世界にアプローチするときに一番有効な手段」がラップであり、世界平和などのスケールの大きな課題に挑む方法でもあります。その地点に辿り着くために、着実に目の前のことをクリアしていくCore-Boyの地に足のついた、揺るぎない姿勢は、私たちに彼の将来性を感じさせます。

Zeebra主催のヒップホップラジオ「WREP」のアシスタントを務め、Twitterではビジネスや政治などに対してツイートする等、色々な分野に成長欲を感じさせるCore-Boy(Novel Core)の今後から目を離せません。

Core-Boyについてさらに詳しく知りたい方は「Novel Coreの身長、服装、楽曲は?」を参考にしてください。


第13回高校生ラップ選手権の優勝者:G-HOPE

kai-you.netより出典

2018年に開催された、第13回高校生ラップ選手権の優勝者は「G-HOPE」です。第12回大会で準優勝だったG-HOPEが、第13回大会では念願の初優勝をはたしました。

独自性の高い、それでいて裂固を彷彿とさせる韻を畳み掛け続け、決勝では熱いバイブスも加え、G-HOPEは会場を沸かせました。巧みなリズムチェンジのテクニックや、連打の韻踏みなど「言葉を扱う技」で、G-HOPEは視聴者や審査員を唸らせました。また優勝後のインタビューで見せた、高校生日本一の座を得た喜びの表情を見せない、G-HOPEの淡々とした様子も印象的でした。彼が元来落ち着いた人柄であるだけでなく、前回の第12回大会の優勝者であるCore-Boyにリベンジできないことが心残りだったようです。それでも優勝候補のプレッシャーから開放され、優勝できた嬉しさと共にホッとする、高校生の顔も覗かせていました。G-HOPEは、優勝後はMCバトルではなく、音源制作に力を入れています。確かな実力で淡々と突き進む、G-HOPEの今後の活動に注目です。

G-HOPEについてさらに詳しく知りたい方は「【高校生ラップ選手権 優勝者】G-HOPEの生い立ちと今、代表曲を知る。」を参考にしてください。


第14回高校生ラップ選手権の優勝者:HARDY

kai-you.netより出典

 

第13回と同じく2018年に開催された、第14回高校生ラップ選手権の優勝者は「HARDY(ハーディー」です。

第13回では惜しくも準優勝に終わりましたが、確かな輝きを放っていました。第14回では、ようやく自身の持つ実力を優勝に結びつけることができた、というイメージです。高校生ラップ選手権では珍しく、韻ではなく、フロウやビートアプローチといったスキルの高いラップと勢い感で会場を盛り上げることができるラッパーでした。的を得たライミングも、HARDYの魅力です。第14回大会では、突如リズミカルなフロウで一気にライムを畳み掛けたり、脚韻をラッシュしたりと、安定のHARDYのパンチの効いたラップスキルを見せつけ、会場を盛り上げました。そしてHARDYの得意技の、高速で相手をからかうラップスタイルも健在でした。また第14回大会は、スポーツ試合の様相を帯びてきていた前回大会までと異なり、終始たくさんの笑いが巻き起こり、会場が過去に例をみないポジティブな空気感に包まれたバトルとなりました。

硬派な一面も持ち、「大阪の若手といえばHARDY」とずっと大阪の期待を背負ってMCバトルを続けたHARDYにとって、この優勝はとても大きなものだったようです。人生に対するスタンスが明確で、不自由な世の中で自由であろう、自分自身で居続けようとするHARDYの強さ、そして周りの人の良い点や悪い点を冷静に見つめて自身の鏡にする謙虚さにはリスペクトです。

音源の方でも活躍を始めたHARDYの今後が、楽しみです。

HARDYについてさらに詳しく知りたい方は「HARDY ラッパー人生、ファッション、代表曲を解説します。」を参考にしてください。


第15回高校生ラップ選手権の優勝者:百足

kai-you.netより出典

2019年に開催された、第15回高校生ラップ選手権の優勝者は「百足(むかで)」です。「00世代最強」の呼び声高く、出場を期待されていた百足が満を持して出場、優勝しました。

卓越したラップスキルもさることながら、高い期待への相当なプレッシャーにも打ち勝つ、メンタルの強さも兼ね備えています。「負けるかも」と思うとメンタルをやられて相手に返せないと思い、「優勝」と思ってラップをしたら調子が良くなったという百足のメンタルのコントロール術には脱帽です。「00世代最強」の異名をとる百足だけに、出場資格最後の年で負けられないとの思いを持つ反面、優勝に驚き、実感できないとも述べていて、本人は初の栄冠に驚きを隠せていませんでした。しかし、第15回大会でも安定の並外れたラップスキルを見せつけ、トラップビートの完璧な掴みの乗り切りも「さすが百足!」と視聴者を魅了しました。圧倒的なボキャブラリーと韻の固さ、勝負師としての凄みを武器に、堂々と相手の技を全て受けて倍返しする技は、百足にしかできないでしょう。サンプリングの豊富さや聴き心地の良さ、リスナーが自然と首が振れるようなリズム感の良さも、百足が誇る特徴です。高校2年生ぐらいのときにラップを始めたばかりの百足ですが、音楽は好きでGreen Dayなどのメロコアにハマった時期もあるそうです。YouTube再生回数が100万回を超える、若手のデビュー曲としては驚異的なヒットとなる彼の「FREEDOM」からも、百足がヒップホップ以外のジャンルの音楽も楽しむことが伺えます。今後の百足の活躍が楽しみです。

百足についてさらに詳しく知りたい方は「ラッパー百足の身長、ファッション、楽曲は?」を参考にしてください。


第16回高校生ラップ選手権の優勝者:RedEye

musicvoice.jpより出典

第15回と同じく2019年に開催された、第16回高校生ラップ選手権の優勝者はRedEyeです。圧倒的なカリスマ性のある説得力と圧巻のステージングで、令和初の優勝者となりました。

RedEyeは第12回でも最もインパクトのあるMCとして、視聴者に強い印象を残していました。ヒップホップの多様化によって、生粋の不良の登場が少なくなった高校生ラップ選手権で、アンダーグラウンドな雰囲気を醸し出すRedEyeはひときわ目立っていました。そしてRedEyeのアウトローなバックグランドから生まれる即興のラップは、放送できるか不安な内容ではありながらユーモアと説得力に溢れていて、視聴者を巻き込む確かなパフォーマンス力を認識させました。第14回大会では、トロピカルサウンドなビートをレゲエのフロウで乗りこなし、まるでレゲエアーティストのような完成度の高さを見せつけました。

第16回大会では、王者にふさわしい抜群のカリスマ性を放って優勝しました。ラップのスキル、レベル、ラッパーとしての人気や格、スタンスの全てが、他を圧倒していました。以前は放送できるか怪しいレベルだったリリックも、大人となり落ち着いたものへと変化していました。また、大会前は「勝敗の鍵は自分との戦いだ」として、スキルアップと共にメンタルを鍛えたそうです。RedEyeは、特徴的なハイトーンボイスとノリの良いレゲエフロウ、心得た自身の魅せ方で、会場の空気を味方につけることが得意なラッパーです。RedEyeは今後はバトルに参加せず、自分で曲を書いて全国での披露を計画中だそうです。まずは自分ができることを精一杯こなして地盤を固め、RedEyeは将来的には海外にも挑戦予定です。今後もますます活躍するであろうRedEyeから目を離せません。

RedEyeについてさらに詳しく知りたい方は「ラッパーRed Eyeのラップ人生、ファッション、代表曲を徹底解説!」を参考にしてください。


まとめ

「高校生ラップ選手権」が始まった頃は、ヒップホップは特別世間に浸透しているわけでも、流行っているわけでもありませんでした。だから「高校生ラップ選手権」を始めとするMCバトルに参加することで、世間に認知してもらう必要がありました。かつてはヒップホップで食べていくことは非常に難しく、趣味としている人が一般的だったのです。

しかし「高校生ラップ選手権」が火付け役になり、ヒップホップシーンは盛り上がりを見せるようになります。その結果、現在ではMCバトルに出場経験がなくても、1曲発表すればYouTubeで1,000万回再生されることもあります。PRの選択肢が増えたことで、大会で優勝すれば「凄さが実績として分かる」ぐらいの捉え方に変わってきています。そして今では、ヒップホップで食べていく職業選択ができるように変化しています。この現状の日本のヒップホップの勢いは「高校生ラップ選手権」の功績で、この大会の影響力の大きさが伺えます。

MCバトルで優勝経験がなくても有名ラッパーになれる時代になったとはいえ、やはり「高校生ラップ選手権」での優勝がもたらす恩恵は特別なようです。優勝は憧れのラッパーたちとの曲作りや日本武道館でのワンマンライブの実施への、大きな近道になります。

MCバトルが、これからも多くの日本の若者の夢を持つきっかけと夢をかなえるキッカケとなり続けるよう、祈るばかりです。そして彼らの活躍と新たな世界観の展開を、楽しみにしましょう。